マジカルストーンを探せ!月の降る島/関田涙

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★★★★★
 面白かった。
 意外だった、と言うと失礼にあたるかもしれないが、関田さんから青い鳥文庫から出すことになったと聞いたとき、「え? 児童文学で有名な、あそこから? 大丈夫かしら」と思ったのは、内緒。第一、不思議な宝石の「マジカルストーン」というネーミングからして安直というかそのまんまというか、ひねりが無くて、子供たちに受けるのかしら、と思ったものだが、これがマジカルでマジカルなストーリーで良かった。とくに「月の降る島」という副題が、ロマンティックで、まるで読者に夢を与えてくれるように、この物語にピッタリ。
 怪盗ヴォックスが登場すると聞いていたので、謎解きを手土産にどんだけ暴れまわってくれるのかしらと思っていたら、あらら、この人の正体自体がミステリだったのね。ま、最後まで正体が判らなかったよ。ていうか、伏線はあったのか。ままま、こんなのはどうでもいい。大事なのはマジカルストーン〈月の石〉が無くなってしまったということ。怪盗ヴォックスの仕業だが、全人類の夢を作りだしているというこれが無くなったら、人は夢を見なくなるのだ。空手のチャンピオンになる夢やミステリー作家になる私たちの夢もなくなっちゃうの? というので、日向と月乃の二人は、〈月の石〉争奪戦ゲームに参加してマジカルストーンを取り戻そうとする。
 とまあ、元気いっぱいの日向とお嬢様タイプの月乃。小学5年生の可愛い女の子が出てきて可愛らしいだけのお話のようだが、登場人物が大人から子供までいろんなタイプが出てくるので、大人の読者でもとても楽しめる。つかみもバッチシ。「全身、虹色のピチッとしたタイツ姿」のピエールと、「白と黒のしま模様で、ベレー帽をかぶったブタみたいな生きもの」であるバクのハツには笑ってしまった。とくに、立ったまま眠っているハツのユニークさは抜群。また出してほしい。
 ミステリとしてはどうかといえば、これが意外と本格的でかなりてこずってしまう。関田さんの本でこれほど判らなかったのは初めてではないだろうか。つうか、今の小学生にとってはこれくらいはなんでもないゲームなんだろうか。いやほんと、難問だった。ていうか、勘でしか判らないような奇問もあったよね。
 ところで、青い鳥文庫といえば、可愛い挿絵がついた子供向けの本だと連想される方が多いと思うが、これがあなどれないのだ。奥が深い。実際、子供たちに人気のある本ばかりなのだが、今回の作品は小学中級からなっているので、お子様がいらっしゃる方にぜひお薦めしたい。
 こんな謎、すぐわかっちゃったよ、というつわものがいたら是非教えていただきたい。師匠と呼ばせていただきます。